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院長ブログ

診療室でのオノマトペ

 「立ち上がる時に頭がフラフラします。」、「夕方になると足がパンパンに腫れます。」、「超音波検査ではゼリーを使いますから、少しヌルヌルします。」、「採血の時チクッとします。」、「MRI検査では、カンカンなどいろいろな音がします。」など、診察室でありそうな会話の一部です。これらの中で、フラフラ、パンパン、ヌルヌル、チクッと、カンカンなどはオノマトペと言われるものです。オノマトペとは何やら呪文のような言葉ですが、れっきとした言語学の用語です。代表的な日本語のオノマトぺ辞典には1620語が収録されているそうです。実のところ、私はつい最近この用語を知ることになりました。書店で「言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか」(今井むつみ・秋田喜美著、中公新書)という本を購入し読んでみたところ、オノマトペに関する研究から見たことばの起源や子どもの言語習得に関する本でした。

 オノマトペという言葉はギリシャ語起源のフランス語です。ギリシャ語のonoma(名前、ことば)+poieo(作る)が「名前を作る」が元になり、フランス語のonomatopeeや英語のonomatopeiaができました。欧米ではonomatopoeiaよりideophone(表意音)という用語が一般的になっており、主に擬音語を指していますが、日本語ではオノマトペは擬音語(例:ワンワン)、擬態語(例:ざらざら)、さらには擬情語(例:わくわく)を含む用語として用いられています。

 オノマトペを入口とする言語学の世界は大変深く大きく広がりをもつことが分かりました。子どもの言語教育のみならず、AIやプログラミングの分野にも影響を与えるテーマのようです。

 オノマトペにはさまざまな言語で共通する部分もありますが、言語によって異なる部分のほうが多いようです。国際交流が進む今、オノマトペの点からコミュニケーションの方法を見直してみるのもよいでしょう。外国の方を診察する時、わかりやすい説明のつもりでオノトマペを使うことがありますが独りよがりにならないように気を付けたいと思います。

 なお、「言葉の本質」は今年の5月25日が初版ですが、すでに10万部をこえるベストセラーになっています。