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院長ブログ

スタミナと寿命

 厳しい残暑が続きますが、暑さを乗り切るスタミナが気になります。

 スタミナを国語辞典(新明解国語辞典)で引いてみると、「ねばり、持久力」とありました。語源について検索すると、「織物の基礎、縦糸の糸」を意味するラテン語のStamenの複数形がStaminaとのことです。Stamenはギリシャ神話で運命の女神が紡ぐ生命の糸を意味する言葉として使われていたそうです。

 運命女神は3姉妹、クロトー、ラケシス、アトロポス。クロトーが糸を紡ぎ、ラケシスが糸の長さを計り、アトロポスが切ることによって人間の寿命が決まるというお話です。この糸がスタミナの語源につながります。このうちクロトーは老化研究で注目されている遺伝子の一つであるクロトー(Klotho)遺伝子の由来ともなりました。

 クロトー遺伝子は現在自治医科大学教授の黒尾先生が1997年に発見した遺伝子です。高血圧に関連する遺伝子を探索する中で発見されたこの遺伝子が欠けているマウスは老化現象が早く進むことが観察され、一躍脚光を浴びました。その後の研究により、クロトー遺伝子にはαとβの2つがあり、この遺伝子から作られる蛋白質(クロト―)はFGFというホルモン(3種類あります)の受容体(細胞表面のスイッチ)として働くことが分かっています。FGFは骨などから分泌され、腎臓などにあるクロト―に作用します。その働きのすべては解明されていませんが、最も重要と思われることは血液中から余分なリンを腎臓を介して尿に排泄させることです。この働きが低下してリンが過剰になると慢性腎臓病、糖尿病、がん、動脈硬化、心肥大など加齢に伴って増加する疾患の危険性が増すことが分かってきました。

 リンは身体の主要な成分であり、エネルギー代謝の場でも欠かせません。リン酸カルシウムは骨の「屋台骨」です。余分なリンがたまらないようにクロト―とFGFが働いているわけですが、私たちの身体はどうしてもリンが過剰になりやすいのです。植物や肉類などにとってもリンは欠かせない成分ですので、これらを食事で摂取するとリンも一緒に摂取されます。さらに気をつけないとリンを過剰に摂取しがちになる現実があります。さまざまな食品添加物にリンが含まれているのです。食品添加物に使われるリンの化合物には目的別に多数のものがあります。あまり神経質になってはいけませんが、食料品のラベルに明記されている場合もありますので注意して見てみましょう。

 よい栄養素を摂ることによってスタミナをつけることも大切ですが、リンを摂りすぎて生命の糸を短くしないことも忘れずに。